私は岸本葉子さんが好きで、何冊か著書を読んでいる。

東大卒にして美人で「天は二物を与える」事が稀にあるという、素晴らしい作家・俳人だ。

この人のエッセイを久しぶりに読んでみた。
読んで意外だったのが案外老後に不安を抱えていて、常に節約を心掛けているという生活ぶりだ。

岸本さんは著書をかなり出版されているし、大学教授・講演・NHK俳句の司会など多岐にご活躍されている。
察するに収入はそれなりにあるのだろうと思う。

それでも節約を進めるのは、老後という呪い文句に苛まれてのことなのだろうかと私は感じた。
神戸に旅行しても夕食を節約のため外食せず、スーパーのカップうどんで済ますというエコノミーぶりが書かれており、私は「こんな恵まれた人でもここまで節約するのか。」と驚いた。

本当は老後こそさほどお金を使わない。
人間の物欲や食欲は歳を重ねる毎に年々衰え、老化して介護が必要になっても介護保険があるし老健等のリーズナブルな施設もある。

有料老人ホームにもし入所を希望したとしても、割安な施設が増加しつつある現在、そこまで大金が必要ないのではないだろうかと私は考えている。

特に岸本さんの場合だと単身世帯だから、毎月の生活費は20万円~30万円もあれば充分だろう(私が勝手に決めつけるのも失礼な話だが)。
だから今をもう少し楽しまれても、本当は問題が無いのではと私は思う。

岸本さんは著作で「住んでいるマンションをいつか売るかもしれないと考えて、ちょっとでも汚れがあった場合夜でもそこを綺麗にして、資産価値を下げない様に考えていました。」と書いている。

今は多少心境に変化があるのか「住んでいる武蔵野市のマンションは一階だから寒くて冬の風呂場は入れない程だったので、老後を見据えて断熱リフォームをしました。もう売らないで終の棲家にしたいと考えてます。」と近著では書かれている。

岸本さんは父親の介護で使用した分譲マンションを近所に保有していて、こちらは現在貸し出して家賃収入を得ているようだ。
「40代半ばで3000万円のローンを組んで、78歳完済予定です。現在は家賃からローンを差し引き、毎月10万円の収入です。」との事。

私が岸本さんの立場だったらこのマンションを売り、ローン返済後の残金と今の貯金で悠々自適に暮らすかなあと思う。
いくら人気の武蔵野市とはいえ、老朽化してくると区分マンションの値段はおそらく下がるだろうと予測されるからだ。

いずれにせよローンが完済された自宅があり、数千万円程度の預貯金があれば普通は何も心配せず毎日を過ごせるハズだ。
それでも心配性の人は「老後」が怖くなるのだろう。

ちなみに私は「老後」が全然怖くない。
世界大戦等で経済が激変してお金が無くなったとしても家さえあればまたそこから頑張るつもりだし、頑張れない年齢に破局的な事象が起きた場合は、私は泰然と普通に死んでいくだけの事。
そのように淡々と考えているからだ。